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COLUMN

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世界の街角で働くということ

英国建築設計現場の風景
山嵜 一也
英国に観光ビザで入国し500社以上の就職活動。貰った断りのレターは59通。留学ではなく働くことを求めて海を渡ったのはリアルな英国の風景を見たかったから。必要とされれば採用、いらなくなればクビ。多国籍チームでは多くの誤解も生じたが、そのムッとする瞬間こそが出発点。相手を拒絶していたら距離は縮まらない。英国のやり方すら通用しない。正解がない。答えは一つではない。相手を説得し、自分を納得させる。建設現場では小さなコミュニケーションの積み重ねで信頼を得るのだと肌で学ぶ。理解しようという覚悟。それは語学力とは別次元の話。仕事で使える言語能力は悔しい思いでしか身につかない。12年間で4度の解雇。英国建築設計現場の風景をお伝えします。
第5回 「@round vol.3(アジア編) 総括1- 海外進出というリスクを取る“リスクヘッジ”」

『リスクヘッジと言う意味でもアジアと日本のそれぞれに拠点を持ちました』

このような言葉から始まった世界の建築現場で活躍した日本人の声を聞くリアルトークイベント、アットラウンド。欧州編、アメリカ編から続く、第3回目はアジア編。アジア各国からこのイベントのために帰国して下さった日本人建築家たちからお話を聞く機会を私達は得た。

今回の登壇者は、白井宏昌氏(H2Rアーキテクツ)、岩本昌樹氏(ON GROUND)、東福大輔氏(零三工作室)、竹森紘臣氏(worklounge03-)の4名。それぞれ、台湾のタイペイ、タイのバンコク、中国の北京、ベトナムのハノイで自らの事務所を設立し活動をしている。さらに彼らの共通点はもう一つの事務所を日本に構えている、もしくは日本の建築事務所などとパートナー契約を結んでいるというところだ。

日本は長年、アジアだけでなく、世界経済を引っ張っていたと見られていたが、近年、それは中国に代わり、更にその勢いはアジア各国へと広がっている。そこで登壇者達は発展著しいアジアに注目し、拠点を構えた。発展途上国であるアジアの国々では成熟しきった日本にはない“伸び代”がある。もちろん、それに伴う、不安定な要素も数多くある。景気、政治情勢、厳しい自然環境、為替相場などだ。しかし、日本の建築市場にしても震災復興需要、五輪特需などが見込まれるものの、少子高齢化による人口減による先行き不透明な部分もある。

もちろん、日本がアジア圏に所属しているという物理的な距離の地の利もあるからこそ、それぞれに拠点を持てるのだろう。飛行機に乗って10時間以上の移動時間と時差を考慮すると欧州やアメリカにも拠点を持つというのは現実的ではない。また、LCCなど格安航空会社が進出してきて、仕事の場を求めて国境を越えるライフスタイルを実現した00年代のEU圏のようにアジア圏がなりつつある。今回の登壇者たちはこのイベントのためにわざわざ一時帰国を果たしている。国内より、海外の事務所に移動するほうが時間がかからないという。このような利点があるからこそアジア圏内での二拠点での活躍が可能になるのだろう。

登壇者たちが決断した“海外進出”はリスクのある選択だったかもしれない。だからこそ、それを成し遂げた彼らの口から伝えられる“リスク”という言葉にはリアリティーがあった。そして、その判断に基づくアジア圏での二拠点化という“リスクヘッジ”のこれからにも注目したい。

このイベントのためにアジア各国から一時帰国した登壇者たちの現在進行形の話しに私達は耳を傾けた。

山嵜 一也 Profile
1974年東京都出身。芝浦工業大学院修了。レイモンド設計事務所を経て、2001年渡英。観光ビザで500社以上の就職活動。ヘイクス アソシエイツでワイカラー ビジターセンターでRIBA賞入選。アライズ アンド モリソン アーキテクツで欧州最大級となるハブ駅キングスクロスセントパンクラス地下鉄駅の設計現場監理。ロンドン五輪では誘致マスタープラン、レガシーマスタープラン、グリニッジ公園馬術競技場の現場監理。個人でもベネトン社店舗計画コンペファイナリスト。スイス家具メーカーのオークションで椅子パターン発表。芝浦工業大学 WEB型非常勤講師(2007-2012)。2013年1月に日本へ帰国。英国の建築設計現場について講演、執筆多数。ロンドン五輪計画についてのコラム「for Tokyo2020!」など。

山嵜一也 公式ツイッター ページ