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COLUMN

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世界の街角で働くということ

英国建築設計現場の風景
山嵜 一也
英国に観光ビザで入国し500社以上の就職活動。貰った断りのレターは59通。留学ではなく働くことを求めて海を渡ったのはリアルな英国の風景を見たかったから。必要とされれば採用、いらなくなればクビ。多国籍チームでは多くの誤解も生じたが、そのムッとする瞬間こそが出発点。相手を拒絶していたら距離は縮まらない。英国のやり方すら通用しない。正解がない。答えは一つではない。相手を説得し、自分を納得させる。建設現場では小さなコミュニケーションの積み重ねで信頼を得るのだと肌で学ぶ。理解しようという覚悟。それは語学力とは別次元の話。仕事で使える言語能力は悔しい思いでしか身につかない。12年間で4度の解雇。英国建築設計現場の風景をお伝えします。
第2回 「@round vol.1(欧州編) 総括2 ~ 海外で働くのに慣れなければならないのはその時間感覚」

海外で働くのに慣れなければならないのはその時間感覚

「事務所のプロジェクトの時間平均は大体8年で・・・」
「このプロジェクトは大体15年かかって・・・」
「この事務所での勤務時間は大体・・・・」

世界の建築現場で活躍した日本人の声を聞くリアルトークイベント、アットラウンド。その欧州編で登壇者が共通して挙げていたものにプロジェクトの期間と勤務時間についてがあった。どちらも日本とは違う“時間感覚”についての話である。

欧州の建築業界で働き始めると新築プロジェクト同様に改修改築プロジェクトが多くあることに気付く。整然とした街並みを考慮すると外観は大きく変えることは出来ない。よって躯体はそのままに内部空間だけに手を加えることになる。竣工当時の図面を手に入れ、現地で調査し、不整合を見つける中で新しい提案をしていく。手間がかかり、時間もかかる。一つのプロジェクトに長く携わることになる人もいる。在籍中に計画だけをしてプロジェクトが始まらなかった話もあった。しかし、世界の人々が憧れる欧州の街並みはこのようにして守られ、継承されていく。

また、海外に出た日本人が戸惑うのが勤務時間に対する感覚だろう。同僚達の出社、退社時間はバラバラだったりする。早朝から出社し、働き始める同僚は夕方に子供を保育所に迎えに行くため早めに退社する。別の日にその同僚は遅めで出社していた。その訳は子供を送っていたからだ。奥さんはその反対の行動をしているという。夫婦共働きが当たり前の社会ではそれぞれが工夫して子育てをしている。

高緯度に位置する欧州の夏は日も長く、天気の良い日が続く。長く厳しい欧州の冬を越えた人々はその太陽を楽しむべく16時退社を目指し早朝から働く。エンジニアにその傾向が強い。それゆえ現場での打ち合わせも彼らの時間に合わせて準備をしなければならない。

これらのように多様な働き方を許容する労働環境がある。もちろん自由とは違う。締め切り直前には遅くまで仕事をする。ただ毎日惰性で残業をするということはない。そもそも遅い時間のオフィスフロアにいる同僚は少ない。遅くまで残業することでアピールしていると勘違いしやすい。しかし、それを能力としては見てくれない。努力賞はない。

言語、労働環境、生活スタイルなど海外で生活するにあたり対応出来なければならないものがある。生まれ育った国や地域とは違う時間軸に身を置くだけで発見できるものもある。時間感覚を一度リセット出来るというのも海外で働くことの大きな魅力の一つだと思う。

@roundでのラウンドトークで登壇者達と参加者が交わって話をする

山嵜 一也 Profile
1974年東京都出身。芝浦工業大学院修了。レイモンド設計事務所を経て、2001年渡英。観光ビザで500社以上の就職活動。ヘイクス アソシエイツでワイカラー ビジターセンターでRIBA賞入選。アライズ アンド モリソン アーキテクツで欧州最大級となるハブ駅キングスクロスセントパンクラス地下鉄駅の設計現場監理。ロンドン五輪では誘致マスタープラン、レガシーマスタープラン、グリニッジ公園馬術競技場の現場監理。個人でもベネトン社店舗計画コンペファイナリスト。スイス家具メーカーのオークションで椅子パターン発表。芝浦工業大学 WEB型非常勤講師(2007-2012)。2013年1月に日本へ帰国。英国の建築設計現場について講演、執筆多数。ロンドン五輪計画についてのコラム「for Tokyo2020!」など。

山嵜一也 公式ツイッター ページ