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COLUMN

Columne

世界の街角で働くということ

英国建築設計現場の風景
山嵜 一也
英国に観光ビザで入国し500社以上の就職活動。貰った断りのレターは59通。留学ではなく働くことを求めて海を渡ったのはリアルな英国の風景を見たかったから。必要とされれば採用、いらなくなればクビ。多国籍チームでは多くの誤解も生じたが、そのムッとする瞬間こそが出発点。相手を拒絶していたら距離は縮まらない。英国のやり方すら通用しない。正解がない。答えは一つではない。相手を説得し、自分を納得させる。建設現場では小さなコミュニケーションの積み重ねで信頼を得るのだと肌で学ぶ。理解しようという覚悟。それは語学力とは別次元の話。仕事で使える言語能力は悔しい思いでしか身につかない。12年間で4度の解雇。英国建築設計現場の風景をお伝えします。
第1回 「@round vol.1(欧州編) 総括1~ 計画的に考えていては海を渡れない」

計画的に考えていては海を渡れない。

「留学先で指導教官である建築家に出逢い、そのままバーゼルにある彼らの事務所に就職しました。」
「日本で独立する前にバックパックで欧州を回り、その途中にポルトにある事務所のドアを叩きました。」
「留学していた米国に仕事がなく、片道切符でオランダに渡り、滞在の2週間で就職を決めました。」
「とにかく現地に行けば、何とかなるだろうとA3のポートフォリオを持って英国への飛行機に乗りました。」

リアルトークイベント・アットラウンド。海外で働いた経験のある日本人から現地のリアルな話を聞き、参加者と共に海外で働くことについて議論を重ねる。その第一回目は欧州編として4人が登壇した。スイスのヘルツォークドムーロン事務所の高濱史子氏、ポルトガルのシザ事務所の瀬下直樹氏、オランダのマックスワン建築都市計画事務所の小笠原伸樹氏、そして、英国のアライズアンドモリソンアーキテクツに勤務していた私、山嵜一也の4名だ。

登壇者の話を聞いて興味深かったのは、皆、現地での働き始めは「行き当たりばったり」だったことだ。不安半分、楽観半分。いや頭の中はほとんどが不安だらけだったのではないだろうか。海を渡るときに現地で働くためのツテがあったわけでもない。そう聞くと“運”が良かったのでは、と思える。しかし、一つだけ言えるのは、現地にいたからこそ得られた情報があり、そこから僅かなチャンスをつかみ、海外で働くということの第一歩を踏み出せた。

そして、この行き当たりばったりの就職活動が全てを象徴しているのだが、海外で働き、生活するためにはいかなる事態に直面しても対応できる柔軟な思考力と行動力が求められる。雇用条件、経済状況、外国人に対する労働条件など日本に比べて海外の日常生活を取り巻く状況というのは常に変化し続ける。そのようなダイナミックな日常を楽しめる気持ちの余裕も求められる。

4人が生活していた00年代の欧州はめまぐるしく変化した時期だった。ユーロ圏の誕生しても間もない頃だ。それによる好景気。通貨が統一され、国境という概念が希薄になる中、多くの人々が国をまたいで仕事を求め、生活をしていた。それは建築事務所の中でも無縁ではなかった。そして、リーマンショックに端を発した欧州危機があった。それぞれの国の経済状況などの差はあろうとも、欧州で働く外国人として似たような境遇だったのだろう。予測が付かない日々をしなやかに生き抜いていたのだと思う。

ラウンド状(円状)に並べられた椅子に座り、同じ目線で話を聞き、議論をする。そこには、まだ見ぬ海外の地で働く姿に思いを馳せる参加者の目があった。2014年7月初日。梅雨の時期には珍しい快晴のこの日。日本と世界を繋ぐリアルトークシリーズ、アットラウンドが始まった。
※今後、アットラウンドの様子と共に世界で働くことについて綴っていきます。

登壇者、参加者がラウンド状に座り、同じ目線で世界の働く姿に耳を傾ける。

山嵜 一也 Profile
1974年東京都出身。芝浦工業大学院修了。レイモンド設計事務所を経て、2001年渡英。観光ビザで500社以上の就職活動。ヘイクス アソシエイツでワイカラー ビジターセンターでRIBA賞入選。アライズ アンド モリソン アーキテクツで欧州最大級となるハブ駅キングスクロスセントパンクラス地下鉄駅の設計現場監理。ロンドン五輪では誘致マスタープラン、レガシーマスタープラン、グリニッジ公園馬術競技場の現場監理。個人でもベネトン社店舗計画コンペファイナリスト。スイス家具メーカーのオークションで椅子パターン発表。芝浦工業大学 WEB型非常勤講師(2007-2012)。2013年1月に日本へ帰国。英国の建築設計現場について講演、執筆多数。ロンドン五輪計画についてのコラム「for Tokyo2020!」など。

山嵜一也 公式ツイッター ページ